ダダ日記ダダダ

ただただ日記。推し量ってくれれば。

当初のこのブログの目的を全く果たしていないことはさておいて

ライブを見に行きました。

渋谷奇天烈大百科。

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吉田一郎が加入して初めてのZAZEN BOYSの日比谷野音のライブは初めてお付き合いした女性との初デートであったし、後藤まりこはミドリ時代からソロになってもずっと私のスーパースターであるし、マーガレット廣井のアル中アルアルは私の傷を舐めてくれていて、ステージに立つお三方はそれぞれ私の中で大変思い入れの強い方々であるためこれは行かねばとゴールデンウィークの渋谷の街に繰り出した。

 

 

行かねばと思いライブハウスに来たもののどんなイベントなのかあまり把握していなかったため客席の一番後ろに立ちなんだかぼーっとしたまま開演まで過ごしていた。

 

他の客も同様にこの情報の少ないイベントについて友達同士であれこれと話していた。

なんとなく聞き耳を立てながら周りを見ると、ミドリのTシャツやZAZEN BOYSの古いTシャツを着ている人がちらほらいたり、私の右隣に立っている女性二人組は最後に見た後藤まりこはいつだったのかなど話している。

みんな、好きだったミュージシャンが、今どうしてるのか、どうなっているのかがやはりまだ気になっていて、そして昔好きだったミュージシャンを見ていた頃の自分を持って来て、期待なのか不安なのかわからない気持ちでここに集まってしまったのだろうと思った。

 

開演時間になってもなかなか始まらなかったが、いっぱいの客席はざわざわもせずに、慣れたものという風に落ち着いていた。

一番後ろで立っている私はと言えば1人でのこのこやって来たので話す相手もなく、左隣の背の低い女性がちゃんとステージが見えるかなといらぬ心配をしていた。

 

15分から20分くらい開演時間を過ぎて吉田一郎が登場し演奏を始めた。

ZAZEN BOYSのベーシストというイメージしか持っていなかったので、てっきりベースをボボンボンとベキベキとドゥインドゥインと弾きまくるのかと思っていたが、曲も歌声も優しく、しみじみと聞き惚れてしまった。

途中、「10年くらい続けた坊主をやめて、髪が伸びてくると、白髪なんかも出てきました」なんて話して、アコギで簡単に愛燦燦を少しだけ歌ってみたりする吉田一郎を見て、過去から現在の流れは自然とあるもので、分断してはいないものだと思った。今ステージに立っている吉田一郎と客席に立っている私の間に、日比谷野音で見たあの日から今日までの時間が確実にあり、そしてそれは特別なことではなく当たり前のことだと安心した気持ちになって少し泣きそうになった。

 

吉田一郎がステージから去り、次の演者までの転換の時間、私は先ほどの余韻に浸りながら、また、久しぶりに見れる後藤まりこに対しどんな気持ちになるだろうか、そして左隣の女性はやっぱりステージが見えてないのではないかと思い、こっちの方見えますよと、私の場所と代わってあげようかなと思っていたところ、右隣の女性が突然倒れた。

 

倒れて、少し痙攣して、その友達が声をかけると気がつき、「大丈夫?」という問いかけになんとか応えたりもしていた。前に居た男性が「大丈夫ですか?僕、看護師なんで安心してください」と言い、1人の女性が走ってライブハウスの人を呼びに行った。

倒れた女性は口から血を流しており、看護師を名乗る男性が「ティッシュとかありますか?」と聞いていたので、左隣の女性がティッシュを差し出した。

ライブハウスの人が現れ、「貧血とか酸欠かもしれないのでいったん外の空気を吸いましょう」と連れ出した。

女性が鞄を持ち外に出ようとした時に、「あ、歯がないかも」と言って口を押さえ、そのまま出て行った。

 

一連の事が起こってからおとなしくなる間、私はただわなわなとしているだけでなんの役にも立たなかった。

ティッシュを探したり、ライブハウスの人を呼ばなくてはと頭の中ではわかっていたが私が動くより先に他の人たちが素早く行動していた。

 

未体験のことに対処できないことはままあったし、次は何もできないなんてことはないように何かあった後には「あの時どうすればよかったのか」というのを日常で割りあい考えているし、人が目の前で倒れたというのも初めてではなかったし、何をすべきかというのも頭の中ではわかっていた。けれど、わなわなしてしまった。怯えていたと言い換えてもいいのだけど、正しい体の動かし方がわからなくなるくらい激しくショックを受けてしまった。

 

程なくして、後藤まりこの演奏が始まった。

後藤まりこは泥酔して出てきてエレキギター一本持って、ビートルズのイエスタデイを女性器名称の替え歌にして歌った。

ソロの曲ももちろんミドリの曲もメドレーで歌ったり、急に止まって「何も考えてこなかった」など言い、感動と笑いを誘った。演奏がうまくいってるとは思えなかったが(恐らく酒のせい)、ずっと聞いてた歌声だったり曲だったりを本人が、音楽を辞めると言った後藤まりこが、またステージの上で歌っているのを見れたことに笑ったり感動したりして、最近の自分がいつの間にか無意識に抱えてきた気持ちの重さから解放されるような気がした。

そして、そんな気がする度に、さっき「歯がないかも」と言った血を出した女性の顔が頭に去来し、なにもできなかった自分がライブを楽しんでいいのか、という疑問というより疑念が影を落とした。

 

なにもなかったかのように楽しむことはやはりできないのだけど、不謹慎であるみたいな気持ちで楽しまないのもどうも違う。不謹慎であるならばライブなんて中止するべきだし中止してない限りは楽しんでいいはず。それに一番大事なのは、私が何もできなかったということではなく、彼女がその後無事であったか大事に至らなかったかということである。

 

そのようなことを頭ではわかってはいても気持ちは全然ついてこなかった。

 

その後マーガレット廣井の演奏も楽しめたかどうか。

 

なんのイベントだかさっぱりわからないがとても良いライブだったと言い切れるのだけど、気持ちはすっかり落ち込んでしまってSNS等で「渋谷 ライブ 倒れた」などと検索しても彼女の安否は分からずじまいだった。

 

このまま1人で家に帰るとしばらく気持ちを持ち越してしまいそうなので、先日「いつでも飲みに誘ってくれ」と言ってくれた友人に、「もし今から可能なら少しだけ一緒に飲んでくれないか」と連絡すると今日は無理だと返ってきた。

 

とにかくもう一旦全て忘れて帰ってすぐ寝ようと帰りにストロングゼロを買って飲んだら、全身の毛穴から毛を引っ張られるような悪寒がして激しい頭痛に見舞われた。

身も心も持たない、もう終わりだと思って布団に入った。

 

 

明日はカネコアヤノのインストアライブに行こうかと思っていたが、多分行けないだろう。

 

そんなゴールデンウィークの始まりであった。